【危険な「やっている風」施工】🏠☔
先張りルーフィングは「施工してあればOK」ではありません!
新築住宅の第三者検査で、屋根と外壁の取り合い部分を確認していたときのことです。
今回の写真は、下屋根と外壁の取り合い部分です。
この部分は、屋根面を流れてきた雨水が集中しやすく、住宅の中でも特に雨漏りに注意が必要な場所です。
そのため、フラット35の木造住宅工事仕様書や住宅瑕疵担保責任保険の設計施工基準などでも、屋根と壁の取り合い部分の防水措置が重要な施工項目として扱われています。
今回の現場でも、一見すると防水補強のための先張りルーフィングが施工されているように見えました。
しかし、よく確認すると大きな問題がありました。
「材料はある。しかし、本来施工すべき位置に施工されていない」
という状態だったのです。
下屋根と外壁の取り合いは、なぜ雨漏りしやすい?☔
下屋根とは、建物の途中階などに設けられる屋根のことです。
この下屋根と外壁が接する部分は、異なる部材や防水層が取り合うため、特に慎重な雨仕舞が求められます。
例えば、
- 屋根面を流れる雨水
- 外壁を伝って流れ落ちる雨水
- 強風によって吹き上げられる雨水
- 外装材の裏側へ回り込んだ雨水
などが関係する場所です。
特に近年のゲリラ豪雨や台風などでは、通常の雨では水が入りにくい部分にも、風圧によって雨水が回り込む可能性があります。
だからこそ、この部分では**「雨水を入れない」だけではなく、「万一入った水をどのように外へ排出するか」**まで考えた防水施工が重要になります。
先張りルーフィングとは?
先張りルーフィングとは、後の工程では施工しにくくなる取り合い部分に、あらかじめ防水材を施工しておくことです。
下屋根と外壁の取り合い部分では、屋根の構造材や下地を組み立てると、後から防水材を連続させることが難しくなる場合があります。
そのため、採用する防水仕様に応じて、屋根と壁の取り合い部分に先行してルーフィングなどの防水材を施工し、防水層の連続性を確保することが重要です。
先張りルーフィングの役割は、単に防水材を一枚追加することではありません。
万一、取り合い部分から雨水が回り込んだ場合でも、その雨水を受け止め、建物内部へ浸入させず、適切な排水経路へ導くことに意味があります。
つまり、
「水が入ったときに、どこで受けて、どこへ逃がすのか」
という考え方です。
今回の施工は「先張り」になっていませんでした⚠️
今回の現場では、先張りルーフィングと思われる防水材が施工されていました。
しかし、その位置関係を確認すると、本来防水層を連続させる必要がある屋根と壁の取り合い部分に差し込まれていませんでした。
取り合い部の横に、防水材を添えるような状態だったのです。
これでは、仮に屋根と壁の取り合い部分から雨水が浸入した場合、その水を先張りルーフィングで適切に受けることができません。
つまり、
「先張りルーフィングはあるのに、先張りルーフィングとしての役割を果たせない納まり」
になっているおそれがあります。
見た目には防水補強が施工されているように見えます。
しかし、肝心の水が通る位置に防水材がなければ、本来期待される防水性能を確保できません。
これが今回の**「やっている風」施工**です。
防水施工は「材料があるか」ではなく「効く位置にあるか」
住宅のインスペクションでは、こうした施工を見かけることがあります。
例えば、
「防水テープは貼ってある」
「透湿防水シートは施工されている」
「ルーフィングは張ってある」
しかし、よく確認すると、施工位置や重ね方、施工順序が適切ではない。
これでは、材料が持っている本来の性能を十分に発揮できない可能性があります。
防水施工で重要なのは、
① 雨水がどこから入り込む可能性があるのか
② 入った雨水をどこで受け止めるのか
③ 受けた雨水をどこへ排出するのか
ということです。
防水材があるかどうかだけでなく、実際の水の流れを考えた納まりになっているかまで確認しなければなりません。
施工順序を間違えると、後から直せないことも
今回のような先張りルーフィングで、もう一つ重要なのが施工順序です。
先張りという名称のとおり、後からでは施工しにくくなる部分に、あらかじめ防水材を施工しておく必要があります。
しかし、屋根の構造材や下地を組み立てた後では、防水材を必要な位置まで差し込めない場合があります。
そうなると、
「本来の位置に施工できないから、とりあえず見える場所に張っておこう」
という施工になりかねません。
しかし、本来の納まりを確保できないまま防水材を追加しても、適切な防水補強になっているとは限りません。
だからこそ重要なのは、施工する職人さんだけではなく、現場監督や施工管理者が、
「どの工程で、何を先に施工しておかなければならないのか」
を理解し、工程ごとに確認することです。
雨漏りは完成してからでは原因調査も改修も大変です
下屋根と外壁の取り合い部分は、外壁材や屋根材を施工すると見えなくなります。
完成後に雨漏りが発生した場合、原因を確認するために外壁材や屋根材を撤去しなければならないこともあります。
さらに、雨水の浸入が長期間続けば、条件によっては、
⚠️ 構造用面材の劣化
⚠️ 柱・間柱などの木材の腐朽
⚠️ 断熱材の濡れ
⚠️ 壁内部のカビの発生
などにつながる可能性もあります。
たった一か所の防水施工の不備が、将来的に大掛かりな補修工事につながることも考えられます。
だからこそ、完成後に雨漏りを見つけるのではなく、施工途中で雨漏りの原因となり得る部分を確認することが重要です。
第三者検査では「施工されているか」だけを見ていません🔍
株式会社家のちえの新築住宅第三者検査では、下屋根と外壁の取り合い部分について、特に注意して確認しています。
主な確認ポイントは、
- 先張りルーフィングが必要な位置に施工されているか
- 屋根と壁の防水層が適切に連続しているか
- 防水材の重ね方向が水の流れに対して適切か
- 防水材に破れや損傷がないか
- 屋根と壁の取り合い部分から浸入した雨水を排出できるか
- 採用している設計図書・施工仕様・メーカー施工要領に適合しているか
といった点です。
特に重要なのは、施工が完了してからでは確認できない部分を、適切な工程で確認することです。
「ルーフィングがあるからOK」
ではなく、
「この位置に施工されていて、本当に雨水を受け止められるのか?」
という視点で確認しています。
「やっている風」の施工が一番怖い
今回の施工で怖いのは、何も施工されていないわけではないことです。
防水材は存在しています。
そのため、施工写真だけを見れば、
「防水補強が施工されている」
と判断してしまう可能性もあります。
しかし、実際の納まりを見ると、本来の目的を果たせない位置に施工されている。
つまり、施工したという事実と、必要な性能が確保されていることは別なのです。
私は住宅の品質管理において、
「何を施工したか」よりも、「なぜその施工が必要なのかを理解しているか」
が非常に重要だと考えています。
材料の役割を理解し、雨水の流れを考え、正しい順序と位置で施工する。
その積み重ねが、住宅の防水性能や耐久性につながります。
見えなくなる部分こそ、施工中の確認が大切です🏠
住宅の完成後には、美しい外壁や屋根が見えます。
しかし、その裏側で防水材がどのように施工されているのかは、ほとんど分かりません。
今回のような下屋根と外壁の取り合い部分も、完成すると確認が難しくなる場所です。
だからこそ、
「材料があるか」ではなく、「本来の役割を果たす位置と順序で施工されているか」
まで確認することが大切です。
雨漏りは、発生してからでは建物にもお施主様にも大きな負担となります。
施工中に確認できることは、施工中に確認する。
これが、新築住宅の第三者検査で大切にしている考え方です。
愛知・名古屋で新築住宅の第三者検査・ホームインスペクションをご検討の方へ
株式会社家のちえでは、名古屋市・愛知県を中心に、岐阜県・三重県で新築住宅の第三者検査・ホームインスペクションを実施しています。
屋根・外壁の防水検査では、
下屋根と外壁の取り合い、先張りルーフィング、透湿防水シート、サッシまわり、配管貫通部、外壁通気層
など、完成後には見えなくなる施工部分を一級建築士が第三者の視点で確認します。
また、工務店・施工会社様向けに、施工品質の向上や現場管理体制づくりの支援も行っています。
「材料が施工されているか」だけではなく、「本来求められる性能を発揮できる納まりになっているか」。
そこまで確認することが、住宅の品質を守るうえで重要だと考えています。
株式会社家のちえ
一級建築士 × 第三者検査・ホームインスペクション
住宅は、見えなくなる部分こそ重要です。
「やっている風」ではなく、「本当に機能する施工」を。
